最近増加中の事実婚とは?そのメリットとデメリット
2016年秋に話題になったドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」。ドラマの中で「契約結婚」する主人公2人ですが、それは法律上の婚姻関係ではなく、事実婚という形を取っています。
このドラマの影響もあり、あらためて注目を浴びている「事実婚」。
日本ではあまり一般的ではありませんが、フランスなど欧米諸国では事実婚を選ぶカップルも多く、社会保障も充実しています。
目次
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事実婚と同棲は何が違う?まずは基礎知識をおさらい
同棲とは恋人同士で一緒に暮らしている状態のことを言いますが、事実婚とは籍を入れていないだけで本人たちに夫婦であるという意識があり、加えて周囲からも夫婦と認められている関係のことを言います。
二人で同居しているだけでなく、生計が同じであったり、家事を分担していたり、財産を共有するなど、一般的な夫婦と同じ生活を送っているかどうかが重要になります。週末だけの同居や半同棲などは事実婚と認められない場合も。
法律婚と事実婚、手続きにはどんな違いがある?
法律婚は、夫と妻が役所に双方の戸籍謄本(旧戸籍と同じ役所で新戸籍を作る場合は不要)と婚姻届を提出することで成立します。
婚姻届には本人たちの署名捺印のほか、夫側、妻側双方に証人となる人の署名捺印が必要です。互いの両親、兄妹姉妹、友人など誰でも構いません。
また、同時に入籍することになりますので、双方が古い戸籍から抜け、二人で新しい戸籍を作ることになります。
一方、事実婚の場合、戸籍の移動はなく、多くは住民票を同一世帯にして、カップルのどちらかを世帯主とし、片方の続柄を「夫(未届)」または「妻(未届)」と記載します。
「未届」に抵抗を感じる人は続柄を「同居人」とする場合もあります。また、住民票を別々にして世帯主となることもあるようです。保証人は特に必要ありません。
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日本と海外、事実婚の割合はどのくらい違う?
事実婚のカップルの数というのは、残念ながら届が出されていないため、正確な数を把握することはできません。
そのため、事実婚の割合を測るには、出生数における婚外子の割合が参考になります。
日本で婚外子の割合は2%程度なのに対し、フランスや英国、アメリカなどでは約半数に達しています。
日本の婚外子の割合が圧倒的に少ない背景には、周囲の理解を得にくいほか、父親に認知の手続きが必要など、諸々の手続き面で不便なことが多いという理由があります。
そのため、子供の誕生を機に法律婚に切り替える事実婚カップルも多いといいます。
現代に即した結婚の形!? 事実婚のメリットとデメリット
では、実際に事実婚を選択すると、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?主に考えられることをご紹介していきましょう。
事実婚のメリット
事実婚のメリットは下記のようなことです。
- 夫婦別姓でいられる
- 法律婚だと多くの場合、女性が結婚後に名字を変えることになります。今は戸籍の名字が変わっても、旧姓のまま仕事ができる会社も増えていますが、法的な書類提出の際など、戸籍の名字と旧姓を使い分けるのは面倒です。また、預金通帳やパスポート、免許証など諸々の変更手続きをする手間が省けます。
- 家制度に縛られない
- 今は家制度の概念は少なくなっているとはいえ、やはり戸籍を入れると相手の家族や親戚からは「〇〇家の嫁」と認識されてしまいます。家によっては、嫁としての振る舞いや仕事を強いられることも。しかし、事実婚なら相手の家に嫁いだわけではないので、そういった縛りから比較的自由になることができます。
- 別れても戸籍に×が付かない
- 法律婚だと別れると離婚歴が付くことになり、再婚などの際に相手方が気にする場合もあります。また、子供がいた場合親権の争いになったり、両親や周囲の干渉が入ることもあるでしょう。一方、事実婚の場合は別れても住民票が移るだけで離婚歴は付きませんし、子供の親権は母親が持っているため、法律婚よりは揉める要素が少ないと言えます。
- ある程度の社会保険や公的サービスを受けることができる
- 法律婚ほど保護されているわけではありませんが、事実婚でも公的機関から夫婦だと認められれば、利用できる社会保険や公的サービスもたくさんあります。年金や社会保険では法律婚と同じ控除を受けることができますし、遺族年金を受け取ることもできます。また、携帯料金などの家族割引サービスが利用できる場合もあります。
- 精神的に対等でいられる
- 「夫」「妻」という役割を周囲から期待されることが少ないため、本人たちも比較的夫婦の役割に縛られることなく、精神的に自立した関係でいることができます。男性側は家族を養うというプレッシャー、女性側は仕事面でのデメリットや家事負担意識にあまり捉われなくてすみます。
事実婚のデメリット
一方で事実婚にはデメリットもあります。
- 周囲の理解を得にくい
- 当事者の両親世代は婚姻と言えば法律婚の時代。籍を入れない事実婚は中途半端に感じて、反対されることも多いかと思います。同じく親戚や兄弟姉妹などからも、籍を入れるよう勧められたり、なぜ入籍しないのか問い詰められることがあるかもしれません。そのたびに理由を説明し、納得してもらう煩わしさがあります。
- 子供の問題
- 事実婚のカップルに子供が産まれた場合、子供は非摘出子として母親の籍に入ることになり、父親に関しては認知の手続きが必要になります。手続きが法律婚より煩雑なだけでなく、母親の名字を名乗ることで子供がいじめに遭ったり、奇異な目で見られたりする心配もあります。
- 税制や相続、生命保険等での不利
- 年金や健康保険の扱いは法律婚と同等ですが、所得税の配偶者控除は受けることができません。また夫婦間で相続権がなく、相続したい場合は遺言書が必要になったり、生命保険の受取人にも指定しにくいなど、金銭面では不利な案件が多くあります。
- 社会的信用を得にくい
- 事実上は婚姻と同等の関係にあっても、籍を入れていないだけで生活する上で夫婦と認められない場面がたくさん出てきます。例えば夫婦の共有名義で家のローンを組むことはできませんし、急に配偶者が倒れて手術が必要な場合でも、家族として同意書にサインすることができません。法律婚であれば認められる当然の権利が認められにくいことに、不便を感じることが多々ありそうです。
気になる生活やお金のあれこれ。事実婚の場合はどうなるの?
社会保障や生命保険、相続や子供のことなど、法律上の婚姻関係なら何の疑問もないことでも、事実婚だとどうなの?と思うことが多いはず。
ここでは、皆さんが気になる生活やお金のことについて、個別にご説明していきましょう。
年金や健康保険について
国民年金においては、事実婚でも収入が一定額以内で夫に扶養されている第3号被保険者であると認められれば、保険料の個人負担が免除されます。
税制について
税金においては、事実婚の税制優遇は認められていません。法律婚の場合、パートナーの収入が一定額以下だと所得税、住民税ともに配偶者控除を受けることができますが、事実婚では受けることができません。
子供について
事実婚で子供を産んだ場合、子供は非摘出子として母親の戸籍に入り、親権は母親が持つことになります。
父親に関しては認知の手続きが必要で、認知されると別れた場合に養育費を請求することもできます。また、父親が日本人で母親が外国人の場合、父親が胎児認知(産前に認知すること)すれば、日本国籍取得が可能です。
相続について
事実婚の場合、遺産などの相続権はありません。内縁関係にあるパートナーに遺産を残したい場合は、遺言書の作成が必要になります。また遺言により相続できた場合でも相続税がかかります。
財産分与、慰謝料について
事実婚関係解消時の財産分与については、法律婚と同等の権利が認められ、内縁関係中に共同で築いた財産について、財産分与の請求が認められています。
生命保険や住宅ローンについて
民間の会社の生命保険では、原則的に生命保険の受取人に指定することができるのは、配偶者か2親等以内の血族とされていて、事実婚のパートナーを受取人に指定することはできません。
ただし、戸籍上の配偶者がいない、生計をともにしているなどの条件が認められれば指定することもできるようですが、法律婚の配偶者より条件が厳しくなることは確かです。
ライフスタイルは人それぞれの時代。自分に合った結婚の形を
事実婚では自由度が高い反面、法律婚と同等の権利が認められるフランスなどと違い、税金などお金の面や、子供が産まれると不便に感じることも色々とありそうですね。
とはいえ、現代は多様なライフスタイルが認められる時代。
- 経済的な理由で法律婚に踏み切れないカップル
- 個人を尊重するカップル
- 旧姓のまま仕事を続けたい女性
にとっては、事実婚は自分たちのライフスタイルに即した、新しい結婚の形と言えそうです。
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